夢のような夢のおはなし
環境汚染、ウイルス感染、核戦争、高齢化、人口問題、経済破綻。
これらの現象が人類の存続すら脅かそうとしていた時代から、すでに何世紀もの時が過ぎていた。
人々は、中性化の最終段階に到達していた。
男女の違いがなくなり、それにつれ、生殖することも減っていった。
ひとりひとりが自由な生き方を選択し、尊重された。
科学とテクノロジーの発展に伴い、衣食住が予測不能で過酷な自然に左右されることはなく、資源が尽きることもなかった。
そして人類の平均年齢は着実に上昇し、ついには高齢者だけの社会になったのだ。
体が不自由になっても、完璧に仕事をこなしてくれるロボットが24時間休むことなく付き添ってくれた。
人間の記憶を読み込んで、思い出話をしてくれたり、娯楽を提供してくれたり、親身になんでも対応してくれた。
人間は、争うことも競うこともなく、寂しく感じることもなかった。
ロボットの中には人間と何ら変わることのない姿の者もいて、喜怒哀楽を自然に表現し、言われなければ人間なのかロボットなのかもわからないほどにクオリティーは極限に達していた。
やがて、生身の人間が、最後のひとりになった。
そして最後のひとりの魂が地上を去ったとき、残されたロボットたちも、自発的にスイッチを切り、すべてがオフになった。
なんてすばらしい人類の最期だろうか。
そのころ、他界した魂たちが暮らす幽質界では、前代未聞の大祝賀会が開かれていた。最後のひとりであった人間の魂の帰還と、物質界における人類の消滅を祝うパーティーである。
そこには、かつて地上に生きた全ての魂が集い、歓声を上げていた。
人類は目覚めたのだ。
何千年にも渡る苦悩と悲嘆の中から、人類は魂の存在を知り、耳を傾けた。
そして救いを知り、救いを得た。
ひとり、またひとり、二度と地上に再生する必要のない魂が幽質界へと帰っていった。
科学も医学も技術も芸術も、すべてが魂を前提として進歩し、人類に貢献した。
人類は、永遠の自由と平穏を得られる道を選択したのだ。
アダムとイブが地上に生まれることは、もう二度とない。
これは、夢のお話、夢のようなお話です。
(注)この記事は、水波霊魂学で学んだことをもとに、私(さんば)の理解の範囲内で作成したものであり、契山館の公式見解を掲載したものではありません。